ファクトシート: アジアとIMF

アジアが力を伸ばしています。その重要性から、アジアの発言力は国際舞台で高まっています。また、アジアとIMFの関係も活性化しています。両者はアジア金融危機から教訓を導き出し、アジア地域の経済的成功と耐性に立脚したパートナーシップの構築に力を注いでいます。

高まるアジアの影響力
アジアは20年後には世界最大の経済圏へと発展すると考えられます。IMFの予測によると、アジアの国内総生産(GDP)は、2030年までに先進7か国グループ(G7)を上回る可能性があります。このように速い成長と最近の世界危機からの回復は、アジアの一層の発展を明確に示しています。アジアは、景気後退局面から、それまでの国際的地位を一段と高め、浮上したと言えるでしょう。

アジアが世界経済の主力へと発展したことから、アジアが経済や金融の国際的な協議の場で一段と大きな影響力をもつのは当然のことであり、この傾向を既に見ることができます。先進及び新興市場20か国グループ(G20)のうち6か国はアジア・太平洋地域の国々で占められています。また、アジアのIMFの議決権は、現在20%強となっていますが、今後、活発な経済活動をみせる新興市場及び途上国のIMFクォータ(出資割当額)のシェアを拡大するという2009年のG20首脳のコミットメントに従い、増加することになっています。IMFのクォータとガバナンスの大々的な改革は2011年1月までに完了する予定で、これによりIMFにおける同地域の代表権は、世界経済に占めるアジアの地位と一段と整合的となることから、この改革はアジアにとりプラスとなります。

アジアの影響力の高まりは、IMFの職員構成と上層部にも反映されています。例えば、IMFの3人の副専務理事の1人は日本の篠原尚之氏であり、また先日、中国人民銀行の朱民前副総裁がIMFの専務理事の特別顧問に就任しました。

IMFの対アジア関係
IMFはアジアとの長期的なパートナーシップの構築に投資しています。最近の世界危機での経験や現在推進中の改革は、IMFがこの地域に数多くの利益をもたらすことを示しており、以下はその一例となっています。

  • 経済監視および助言: 加盟国の経済及び金融政策の監視は、サーベイランス(政策監視)と呼ばれ、IMF業務の中核をなしています。この度の世界危機により、個々の国のみならず、グループそして世界レベルで経済政策や経済情勢の監視を行う重要性が浮き彫りとなりました。現在、IMFはサーベイランス業務の強化に向けた作業を行なっており、今後地域レベルでのサーベイランスを一層重視することになりますが、これはアジアに特に高い価値をもたらします。IMFは半年毎にアジア太平洋地域経済見通しを発表しています。脆弱性や波及の可能性をこれまで以上に重視することにより、IMFのサーベイランスは、世界規模の視点を提供すると同時に、国別あるいは地域別の分析を深める上でも有益です。また、IMFは、アジアや他の国グループとの協調作業を進めることで、G20の相互評価プロセスのような、より効果的なピア評価のネットワークの構築に貢献することができます。また、アジアはIMFの金融セクター評価プログラム(FSAP)でも重要な役割を果たしています。1999年に導入されたこの任意のプログラムは、各国の金融部門の分析を詳細且つ総合的に行うものです。今日までに、アジアの主要国を含め加盟国の4分の3以上が同プログラムに参加しています。
  • 技術支援および研修: IMFの技術支援は、各国の経済政策や金融に関する問題を効果的に管理・運営できるよう助成することで、これらの国の生産資源の開発を支援するものです。IMFでは、こうした技術支援や研修を行なうにあたり、地域的アプローチを採用することが一段と増えています。各国向けの技術支援に加え、7か所の地域技術支援センターを運営しており、その一つである太平洋金融技術支援センターでは太平洋の小島嶼国15か国を対象に、キャパシティ・ビルディングに関する技術支援と研修を行っています。さらに、中国、インド、及びシンガポールでは地域研修プログラムを展開し、また東京には地域事務所を設置、重要な役割を果たしています。
  • 財源: 世界経済危機の際に各国を支援する取り組みの一環として、IMFは融資能力を強化しましたが、引き続き融資手段の改善に向け様々な手法の検証を行なっています。現在、IMFの融資は増額され、融資条件は各国の様々な特長と状況を勘案したものとなり、さらに最脆弱層に対し一層配慮するものとなっています。また先日、G20のリーダーは、金融危機の拡大への対処能力の向上にむけ、IMFの融資能力を3倍増の7,500億ドルとすることに支持を表明しました。さらに、欧州のパートナーとの協力の下で行われた最近の融資の経験に基づき、IMFは、アジアをはじめとする地域レベルの融資取極との連携をさらに拡充しようとしています。
  • 知識の共有: アジアは、その強固な政策基盤を基に、アジアが依然として抱える短・長期的な問題を解決する必要があり、IMFはこの過程で支援を行うことができます。IMFは、多数の国々及び地域で得たノウハウを活用し、このプロセスのみならず、より広くは世界経済への円滑な統合においても支援を行うことが可能です。同時にIMFは、アジア加盟国との、地域機関との最善の連携方法などについての協議から利益を得ることができます。
  • アジア危機の教訓
    1997~1998年に一部のアジアの国々を襲った危機は深刻なもので、多くの人々が大きな苦難を経験しました。危機の間にIMF等から提供された多額の融資は、痛みを伴う深部に渡る改革を行なう上で、多くの政府が必要としていた余裕を提供しました。それ以来、こうした国々の多くは目覚しい発展を遂げました。今回の世界危機でアジアが示した耐性は、時として困難ながらもこれまで10年に渡り粘り強く続けてきた、改革の証ともいうべきものです。

    IMFはアジア危機から重要な教訓を学びました。特に、深刻な経済問題に取り組むには断固たる措置が必要ですが、プログラムに付随する条件は、喫緊の問題をより重視すべきであり、またこれらプログラムの社会的影響をより認識すべきだと理解しています。IMFは、こうした教訓を最近の融資プログラムに活かすよう努めてきました。今回の危機で示されたアジアの耐性の例や、同地域で推進されているグッドプラクティスの例が、他の加盟国に対するIMFの助言に反映されています。

    アジアとIMFの今後
    IMFに対するアジア主要国のコミットメントは、この度の世界金融危機の際に顕著にみられました。複数のアジアの国々がIMFの融資能力の強化に合意しました。最初に日本がIMFに1,000億ドルを拠出し、韓国、中国、インド、シンガポールが続きました。加えて、インドの中央銀行は昨年、IMFの金200トンを購入し、IMFの譲許的融資能力の拡大に貢献しました。

    IMFは、アジアとのより密接な対話を促進するとともに、同地域との相互関係の確立に尽力しています。そのコミットメントの一環として、IMFのアジア太平洋局は昨年、アジアの著名な経済専門家で構成される地域諮問グループを設立しました。同諮問グループは、アジアに影響を与えるIMFの政策について助言を行ないます。またIMFは、同地域におけるプレゼンスの向上を図っています。現地駐在員事務所、或いは、地域パートナーとの地域レベルでの会議(例えば、2010年3月にハノイで開催された「アジアの開発途上国」に関する会議や2010年7月に韓国・大田市で開催された「アジア21」会議など)の開催などを通しこの課題に取り組んでおり、対話と共通のビジョンを通して、アジア、そして全世界で持続的な経済成長を実現することを目標としています。